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相場操縦行為とは

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会社法学者の視点から見た、SMBC日興証券相場操縦事件

1 SMBC日興証券の相場操縦事件の特異性
これまで相場操縦事件と言えば、デイトレーダーグループや「仕手筋」による株価操作事件などであったが、昨年(2021年)の末、日経新聞に証券取引等監視委員会がSMBC日興証券(以下、SMBC日興という)の相場操縦疑惑につき解明作業を行っている旨の記事が掲載されて以来、継続して報道されるようになり、大きな社会問題の様相を呈してきた。これまでSMBC日興のような大手証券会社の1角を占める証券会社が相場操縦事件の疑いで強制調査を受けた例はないという点で、特異な事件である。最終的には、東京地検特捜部が2022年3月25日に副社長Aおよび数名の幹部社員が相場操縦罪で起訴されたともに、両罰規定により法人としてのSMBC日興も刑事責任を問われる可能性が出て、事件としては一応の終局になった(日経2022/3/25「SMBC日興を起訴 相場操縦罪、大手証券で初 副社長逮捕 公正な価格形成阻害」)。
今後、刑事裁判の場で争われることになるが、なぜSMBC日興のような大手証券会社がこのような事件に手を染めるきっかけになったのか、どのような手法を使ったのか、内部統制システムを構築しているはずの大会社において、なぜ内部的にストップをかけることができなかったのか等、いろいろ検討する問題は多い。

(4)SMBC日興の内部管理体制の問題点
ア 本件相場操縦行為に関する被告人の違法性の認識
本件は、刑事事件に発展したケースであるが、被告人側は、通常の業務行為であって、違法性はないと主張している。刑事犯罪の場合は、無罪推定が働くので、検察は疑いのない程度まで立証しなければならないが、証券取引等監視委員会は、これをクリアできるとみて告発したのであろう。。
本件の一連の相場場操縦疑惑行為について、SMBC日興の内部管理体制はどうなっていたかが問題になるが、この点について、すでに社内で監視・審査を行う売買管理部が「不審な取引」として指摘していた。しかし、被告人達はこれを無視したという(JIJI.COM 相場操縦行為とは 「SMBC日興証券相場操縦事」)。さらに本件事件では、証券取引等監視委員会が2020年秋に同社に検査に入った後も、被告人らは不正を否定し、その後も相場操縦が疑われる大量購入を続けたという。

4 罰則
本件において、リーダー格の副社長を始めとする被告人が有罪となった場合の刑事責任は、10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金または併科となっている。10年以下の懲役は、一般の財産犯では窃盗罪と同じ罪責である。また、本件では、両罰規定によって、SMBC日興が法人としての受ける可能性のある罰金の金額は、7億円以下である。
この刑罰の量刑が相当かどうかは問題がある。というのは、米国では金融市場をゆがめる犯罪へは重罰が科される。2010年に米国株式相場が数分間で約1000ドル急落する原因をつくったとされたトレーダーには、米当局は当初380年の量刑に相当すると主張していた(上記日経「SMBC日興、市場の信頼損ねる 収益化急ぎひずみ 社長「内部管理体制、十分でなかった」)。アメリカでは証券市場が国民の資産形成に大きく寄与していることから、証券市場の不正行為に厳罰で臨む姿勢が徹底している。一罰百戒という諺もあるように、今回の事件を契機に、わが国でも株式市場の不公正行為に対して、罰則が厳しくなる可能性もある。

相場操縦行為とは

相場操縦行為とは、株式等の市場における価格形成を人為的にゆがめる行為で、刑事罰の対象となります。
金融商品取引法159条によって、内容が規定されています。

・第1項
有価証券等の売買等で、取引が繁盛に行われていると他人に誤解させる等、取引の状況に関して他人に誤解を生じさせる目的をもって、以下の行為をしてはならない。
①仮装売買
②馴れ合い売買

・第2項
有価証券の売買等で、いずれかの取引を誘引する目的をもって、以下の行為をしてはならない。
①現実取引等による相場操縦(変動操作)
②市場操作情報の流布
③虚偽情報による相場操縦
④安定操作取引

①の、現実取引等による相場操縦は、株価をつり上げたい場合に、発注する意思がないのに大量発注をして買い注文が旺盛なようにみせて、それにつられた第三者が買いを多数入れてきたときに、高値で売り抜け、買い注文は取り消す(または指し値を大きく下げる)などの「見せ玉」などが代表的です。取引を誘引する目的が必要ですが、取引態様から推認されるものとされています。

このように、かつては仕手筋といった「プロ」の投機筋が株価操縦の担い手であったのが、ネット取引の普及によりデイトレーダーといった一般個人投資家でも株価操縦ができるようになり、証券取引等監視委員会もこのようなデイトレーダーによるネット取引を通じた株価操縦行為には注視しています。

株価操縦に該当する行為かどうかは、一義的には定まらず、発注量や場の状況、反復回数等総合考慮して判断する必要がありますので、金融庁から疑いが掛けられている場合などは、弁護士に相談して、今後の見通しについて相談することが望まれます。

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株の禁止行為の「相場操縦行為」について、教えてください。 株に興味があり、初心者向けの説明を読んでいたのですが、疑問がわきました。

株の禁止行為の「相場操縦行為」について、教えてください。

株に興味があり、初心者向けの説明を読んでいたのですが、疑問がわきました。-----
相場操縦行為とは、相場(株価)を故意に変動させたり、一定水準の価格に固定する事です。簡単に言うと、自分の思うがままに株価を動かそうとする行為です。
-----
証券会社に上記のような説明がありました。

質問.そもそも、個人に相場を動かすことができるの?
本質.いけない行為という「行為」については理解しています。いやいや、一個人にはどうにもならないんじゃないの?
FXを知っていて、どう考えても円安にしたり、円高になんて個人でできるとは思えない。という所から疑問を持ちました。

株では、できてしまうのですか?私がどこかの株を買うとぐいーーーんと見てわかるような
株価変動するのでしょうか?

ベストアンサーに選ばれた回答

いわゆる、仕手株ですね。5年ほど前から保有してる株が有りましたが、
5年間300円のまま、誰も売買して無い株でした。将来を期待して購入、
東北の地震や津波で、会社も傾きしはじめる始末。
今年に入り、トピックスが有りましたが、おおやけに公開される事はなく
監視してましたが、8月の後半から株価動き始めました。株価が上がり始めたので
1000株単位で、追加購入しましたが、上昇原因が不明。
調べてる時間も無く、株価が急上昇、株価の乱降下と上昇の繰り返しで、
2週間の間に3000円以上まで暴騰しました。3000円行く前に怖くなり、
全部を売りました。全部500円以下で購入してるのが、3000円まで上がり
ましたので、かなりの利益を頂きました。

憶測情報ですが、宇宙開発用の特殊樹脂の開発成功、NASAなどとの業務提携
有りえない情報が、業界筋に流れてました。 宇宙で1000℃でも溶けない樹脂。
宇宙で化学実験を行う材料を提供したとか噂が流れました。
新聞とかにも出ないから、疑問でした。 大手の化学メーカーが米国の会社に
サンプル提供したのを、上手く尾ひれを付けて、ベール包んで流したのが
株価が急上昇したのが原因らしい。 完全に仕手株だと思います。
自分が化学工場に勤めてるから、自分の会社の研究関係、関連商社にお伺いたて
噂の元を、探せただけですね。 材料は存在するが、サンプル提供をしてないから
ガセネタと判断しました。
私の会社の人も、暴騰に便乗して株価を買ったそうです。
原因不明だけど、300円の株が、2000円に暴騰したら、一日に暴落しても、
損する事はあり得ないです。 同じような業界だから、大博打を打てました。
仕手株筋が、2週間の間、株価を1000円を1500円上げては下げて、ドンドン株価を
上げるコントロールして、3500円まで上げました。
上がった要因は、一度もおおやけに公開されずに株価は下がり始めました。
まだ、1800円でフラフラしてる。「朝日ラバー」で検索してみれば、
異常な株価暴騰か、理解出来ると思うよ。
今年は、他にも株価が暴騰してる株価が有りますね。興味が有ればまたね。
わずかな人が、値上げ前に株価を買い占めてるのが判るのですが、
自分で、其処の株を持ってないと判らない現実です。
この数年間、売り買いがほとんど無いのに、突然に売り買いが増加。 相場操縦行為とは
前の経験で、バブルのように膨張すると ヤマを掛けて大量買いしました。
どこまで、伸びるかは不明だけど、暴走してる株は止まらない。
火山の噴火だと思いました。 勘が当たりました。

相場操縦行為とは

下記の禁止行為をよくご理解いただき、法令等に抵触することのないようお取引をお願いします。

不公正取引の禁止(金融商品取引法第157条関係)

金融商品取引市場の公正な価格形成を損なう行為(偽りをもって他の市場参加者を惑わせ取引に誘引するなど)を行ってはならないこととされています。

  • 不正の手段、計画又は技巧をすること
  • 重要な事項について虚偽の表示がある文書を使用するなどして金銭その他の財産を取得すること
  • 取引誘引目的をもって、虚偽の相場を利用すること

風説の流布、偽計等の禁止(金融商品取引法第158条関係)

有価証券の募集や売出し、売買その他の取引等のために、あるいは有価証券等の相場の変動を図る目的で次の行為を 行ってはならないこととされています。

  • 風説を流布すること
  • 偽計を用いること
  • 暴行もしくは脅迫を行うこと

相場操縦行為等の禁止(金融商品取引法第159条関係)

有価証券の売買のうちいずれかの取引が繁盛に行われていると他の市場参加者に誤解させる目的を持って 次の行為を行ってはならないこととされています。

■仮装売買
他の市場参加者に取引が繁盛に行われていると誤解させる目的をもって、同銘柄の売買注文を同時刻に同価格で発注する権利の移転を目的としない取引をすること

  • ザラバ中に、同一銘柄の売りと買いを同一指値、双方あるいは一方を成行もしくは優先する価格で発注された場合
    (優先する価格:売注文指値≦買注文指値)
  • 相場操縦行為とは
  • 同一日において既に発注済であり、全出来になっていない注文と同一銘柄に、同一指値、優先する価格、あるいは成行での反対注文をされた場合
    (優先する価格:売注文指値≦買注文指値)

■馴合売買
お客様Aが行う売付け又は買付けと同時刻に、それと同価格でお客様Bが同銘柄の買付け又は売付けを行うことをあらかじめAとBが通謀の上取引を行うこと

■株価固定
株価を上下どちらにも変動させない目的をもって、相場をくぎ付けにし、固定し、又は安定させるための売買をすること

見せ玉
約定させる意思のない注文を発注し、その後訂正や取消を行い取引が繁盛であると他の市場参加者に誤解させ取引を誘引すること

終値関与
立会終了付近の時間帯で、終値を操作する目的をもって取引を行うこと(関与率については、流動性の低い銘柄ほど高くなります)

市場関与
株価を操作する目的をもってその日の出来高の多くを占める取引を行うこと(関与率については、流動性の低い銘柄ほど高くなります)

買上がり(売り崩し)
株価を上げる(下げる)目的をもって買付け(売付け)を継続して行うことにより、取引が繁盛であると他の市場参加者に誤解させ取引を誘引すること

高(安)値形成
株価を上げる(下げる)目的をもって、市場の上げ(下げ)にすかさず追随する買付け(売付け)を行うこと

先物取引の「見せ玉」に関する規制

■対象商品
日経225先物・日経225mini

■対象となる時間帯
始値・終値決定前の1分間

日中取引 8:44~8:45、15:14~15:15
ナイトセッション 16:29~16:30、5:29~5:30

■対象となる取消・訂正
予想対当値段よりも低い値段の売り注文又は高い値段の買い注文(売・買とも予想対当値段の注文を含む。)の取消及び予想対当値段よりも低い値段から高い値段への売り注文の訂正又は高い値段から低い値段への買い注文の訂正。

A.板寄せ直前における大口注文取消等

Aの対象となる訂正及び取消注文数量

相場操縦行為とは
右記以外の
対象時間帯
5:29~5:30
日経225先物 250単位(枚)以上 125単位(枚)以上
日経225mini 500単位(枚)以上 250単位(枚)以上

B.1週間における約定に対して高い倍率の訂正・取消の繰り返し等

Bの対象となる訂正及び取消注文数量

右記以外の
対象時間帯
5:29~5:30
日経225先物 250単位(枚)未満 125単位(枚)未満
日経225mini 500単位(枚)未満 250単位(枚)未満

空売り規制(金融商品取引法第162条関係)

空売りとは、有価証券を有しないで又は借り入れてその売付けを行うことですが、それを利用して売り崩し等が行われる恐れがあるので、次のような規制があります。

トリガー値段(当日の基準価格から10%以上低い価格)で約定が発生した直後から、その銘柄は「トリガー抵触銘柄」として価格規制の適用となります。
トリガーに抵触する銘柄の空売りを行う場合は、直近公表価格以下の価格で発注してはいけません。ただし直近公表価格がその直前の異なる価格を上回る場合は、直近公表価格と同値での発注は可能です。

  • 取引時間中にトリガーに抵触すると、その時点から翌営業日の取引終了まで価格規制の対象となります。
  • 個人投資家が行う50単元以内の信用新規売り注文につきましては、原則空売り価格規制の適用除外となりますが、寄付き前などに50単元以内の注文を複数回発注し、結果的に50単元を超えた場合は一口注文とみなし空売り価格規制の対象となることがありますのでご注意ください。
  • 空売り価格規制を潜脱する目的で50単元以内の信用新規売りを分割して発注することは不公正取引の疑いをもたれることがありますのでご注意ください。
  • 51単元以上の信用新規売りを発注される場合は、価格規制に抵触しない値段で一度に発注をして下さいますようお願いします。

内部者取引の禁止(金融商品取引法166条関係)

内部者取引(インサイダー取引)とは、例えば、上場会社の会社役員等の内部者情報に接する立場にある人(会社関係者)が、 相場操縦行為とは その特別な立場を利用して会社の重要事実を知り、その情報が公表される前にこの会社の株式等を売買することなどをいい、法律で禁止 されています。

【注意】
会社関係者より重要事実を伝え聞いた者も、その情報が公表される前にその会社の株式等を売買することは禁止されています

■会社関係者 相場操縦行為とは
上場会社(親会社・子会社)の役員、代理人、使用人、その他の従業員等(パート・アルバイト含む)
なお、役員を退任後一年間は会社関係者とみなされます

■重要事実
上場会社等に関して、投資家の投資判断に著しい影響を及ぼすような事実

  1. 株式の発行や自己株式の取得等
  2. 資本金の額の減少
  3. 株式無償割当
  4. 株式分割
  5. 株式交換
  6. 株式移転
  7. 合併
  8. 事業の譲渡又は譲受け
  9. 新製品又は新技術の企業化
  10. 業務上の提携と解消
  11. 事業の休止又は廃止
  12. 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害
  13. 主要株主(議決権の10%以上を保有)の異動
  14. 決算情報の変更 など

安藤証券では金融商品市場の公正性、透明性を図るため、又投資家の皆様より信頼していただける証券会社を目指し、上記の取引について毎日売買審査をおこない不公正取引の防止等に努めております。

SPECIAL REPORT スペシャルレポート

水田 孝信

● 経歴
・2002年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。
・2004年同研究科博士課程を中退しスパークス・アセット・マネジメント株式会社入社。
クオンツアナリストなどを経て2010年よりファンドマネージャー。
・2017年度より上席研究員兼務。
・2014年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。 相場操縦行為とは
同年より東京大学公共政策大学院非常勤講師。
・2016年度より人工知能学会金融情報学研究会幹事。2019年度より主幹事。

● 受賞歴 相場操縦行為とは
・2010年度および2012年度、人工知能学会研究会優秀賞。
・国際学術会議 IEEE Conference Computational
Intelligence for Financial Engineering and Economics 2014
にて3rd place award受賞。
・2020年度、人工知能学会全国大会優秀賞。

なぜそれは不公正取引なのか?

20世紀初頭の株式市場

19世紀末ごろから20世紀初頭にかけて活躍したジェシー・リバモアという伝説的な投機家がいました。彼にまつわる本はいろいろあるのですが、ジャーナリストのエドウィン・ルフェーブルが書いた、基本的にはフィクションで彼をモデルにした小説”Reminiscences of a Stock Operator”*5(以下、この本)が、もっともリバモアの取引手法や心理状況を詳細に記述しているといわれています。この本は人物名や企業名など固有名詞は創作の部分がありますが、具体的な取引戦略がどのようなものだったか知るにはとても良い本です。100年近く前に書かれたこの本は、現在でも、投機家たちの間で必読書として扱われているようです。
この本ではリバモアがマニピュレーター(相場操縦師)を行った事例をいくつかあげています。いずれも1915年からこの本が出版された1923年までのできごとと思われます。米国で本格的に不公正取引の対策が始まったのは1934年*4なので、まさにこれらの取引を平然と行える最後の時代でした。そもそも、相場操縦師なるものが平然と存在していることが、現在では信じられない状況です。しかしながら当時は、相場操縦は投資技術のひとつであると考えられていたようです*3*5。そもそもダメなことだと多くの人が思ってもいなかったのでしょう。

1つ目の事例:相場操縦師の仕事

1つ目の事例を簡単に説明しましょう。リバモアはある日、ある銘柄の売却を手伝って欲しいと頼まれました。頼んできたのはその銘柄のインサイダーの人たちでした。この本にははっきりとは書かれていませんが、つまり、創業者や、創業時の出資者、経営者などでしょう。そのインサイダーの人たちは自分たちの持ち株を売りたいのだけれども、この銘柄の日々の売買があまりにも少なく売れそうにありませんでした。インサイダーの人たちの持ち分は、全部で発行済み株式数の70%にも及んでいました。
現在の感覚で考えれば、売り出しを行って広く買い手を探すといった方法しかないだろうと思われます。しかし、当時の感覚は全く違うのです。当時の常識では、まず初めに、この銘柄を買うのです。インサイダーたちはリバモアに買付資金を差し出し、リバモアは価格が大きく変動するタイミングを見計らって買います。その銘柄が欲しいのではなく価格を動かすのが目的です。この本には「売りと買いを交互に実施するプロセスを繰り返しながら、その間、常に相場を担ぎ上げていかなければならない。」と、はっきり書かれています。
もっと言うならば、リバモアが頼まれたのは売却作業ではありません。「ひと相場作って欲しい」と頼まれたのです。”ひと相場”はつまり、株価が上昇して、かつ、多くの株数を売却できる活況な相場、ということです。相場操縦に他なりません。これが相場操縦師の仕事なのです。

2つ目の事例:少し奇妙な現象

2つ目の事例は、少し奇妙なものを紹介します。やはり、インサイダーの1人に売却するための”ひと相場”相場操縦行為とは を作ることを依頼されたリバモア。1つ目の事例と異なり他にも大株主がいそうだということで、リバモアはあらかじめ調査し、あと3人大株主がいることを見つけました。
”ひと相場”作っている途中でその3人の誰かが売却を始めると”ひと相場”作ることが困難となり、そのインサイダーだけでなく、3人の大株主も損をするとリバモアは考えました。そこで、3人に相場操縦の計画をすなおに打ち明け、”ひと相場”作るまで売らない約束を取り付けました。この3人にとっても、”ひと相場”作ってもらった方が自分たちの利益につながるのです。
その後、リバモアは時間をかけ慎重に相場を分析していました。そんな分析の日々が続いたある日、急にこの銘柄が活況となり大きく上昇したのです。リバモアは何も売買していなかったのですが、”リバモアが相場操縦をしている”という噂が広がっていたのです。リバモアは自身に問い合わせが多く来たため、この噂の存在に気づきました。リバモアはこれをチャンスととらえ、依頼された株数を数日かけてすべて売却しました。”相場操縦している”という噂だけで実際に相場操縦が完了した奇妙な現象が起きてしまったのです。
しかしこの話にはさらなる後日談があります。実はこの噂を流したのは、依頼者以外の3人の大株主のうちの1人だったのです。しかも、実際にはリバモアはまだ買いを入れてないことを察知したその人は、リバモアはここから買ってくると勝手に思い、さらにこの銘柄を買い込んだのです。実際にはリバモアは買わなかったため、”さらなる上昇”は起きず、結局その人は大損をしてしまいました。

3つ目の事例:インサイダー取引に倍返し

3つ目の事例は、バブルの歴史を振り返った本、” Devil Take 相場操縦行為とは the Hindmost: A History of Financial Speculation”*3からです。これまでの2つの事例より半世紀ほど前の、1860年代の話です。この時代、鉄道がひかれ始め鉄道株がブームとなっていました。鉄道会社に許認可がでると株価が大きく上昇しました。当時の鉄道への期待は現代では考えられないくらい過剰なもので、鉄道によって「全世界が一つの偉大な家族になり、一つの言語を話し、同じ法則の下で結束し、一つの神を崇める時代が到来するのを見ることができるかもしれない。」という人もいたくらいだそうです*3。
さて、アメリカのある市で路面電車を走らせる認可が出たことにより、鉄道株が軒並み急上昇しました。しかしその後、この認可がそのうち取り消されることを知った市議会議員たちの一部が結託し、大規模にある鉄道株に空売りを仕掛けます。市議会議員という強い立場ゆえに知った、当局公表前の情報を使った空売りであり、今でいうインサイダー取引なわけですが、当時は普通のことだったようです。
しかし、この鉄道株を多く保有していたある投機家はこの動きを察知して、逆に買い占めを始めます。このような非公開での買い占め行為も現在ではできないのですが、当時はこれも普通のことだったようです。買い占めによって、空売りを仕掛けた市議会議員たちは窮地に陥ります。株価が上昇して損をしただけでなく、この投機家がほとんどの株を保有することになったため、空売りした株の買い戻しがでず、借りた株が返せなくなったのです。市議会議員たちはこの投機家の言い値で買い取るしかなくなってしまいました。その言い値は、市場でついていた価格よりもさらに高かったそうで、破産したものもでたとか。まさに、倍返しされてしまったのです。

近代と現代の違い

”良い”市場とは?

市場が提供すべき機能

そもそも市場は何のために存在しているのでしょうか?つまり、社会にどのような機能を提供しているのでしょうか?これについては以前レポート*6に書かせていただきましたが、簡単に言えば、価格発見機能と流動性の供給です。
価格発見機能とは、その株式の適切な価格を見つけることです。そもそも株価とは、企業の価値で決まるべきです。株式をすべて買うと企業を保有することになりますので、株式を買うということは企業の一部を保有することになります。企業の一部を保有するのですから、株価は企業の価値によって決まるべきです。これまでの事例はどうだったでしょうか?企業の価値とは全く関係のない、操縦された価格で、多くの市場参加者が売買してしまっています。価格発見機能が損なわれていたのです。
流動性とは、売買したいときに、価格を大きく動かさずに売買できるかどうかを意味します。流動性が高いと、価格を大きく動かさずに、売買したいときに売買できます。流動性が低ければ、売りたいときに大きく割り引いた価格でしか売れなかったり、買いたいときに大幅に高い値段で買わされたりします。1年まてば適切な値段で売買できる、であれば流動性は低いと言えます。つまり、いつでも、適切な価格で、多くの量を売買できるかどうかが流動性です。
そのため、価格発見機能が機能していないと流動性は意味を持たないことが分かります。いくら多くの売買ができても、価格が発見されていない、適切な価格で売買されていなければ、意味がないのです。そのような状況は流動性があるとは言えません。本当は100円くらいの価値があるものを、「1円でいくらでも買い取りますよ」と言う人があらわれても流動性を供給しているとは言えないですよね。
そのように考えると、これまでの事例は市場が提供すべき機能を全く提供していないことが分かります。市場がこれらの機能を提供できるようにルールが必要なのです

公正でないと取引参加者が集まらない

ずるいとは何か?スポーツの例え話

しかし、この“ずるい”は取引参加者がずるいと感じるかどうかにかかっていて、理論的に決められるものでもありません。何をずるいとするか、ずるいとは何か、みんなはどんなことをずるいと感じるのか、という哲学的な問いが必要になるのです。それがないと公正とは何なのかが決まらないのです。
最初に紹介した経済学者のジョン・マクミランは大著*2において、「フットボールの歴史は市場発展のモデルとなる」として、市場をうまく設計する重要性をサッカーやラグビーのルールの発展を例にして説明しています。
19世紀初頭、まだサッカーとラグビーに分かれる前の”フットボール”は、2つのチームに分かれ、ただボールを敵の陣地に運ぶというゲームでした。ボールに人が集まり、力ずくで奪い合う、そんなゲームだったそうです。体格が良い人だけが活躍でき、それ以外の人は茫然と眺めているだけのゲームだったと述べられています。その後、「一国を統轄する団体であるフットボール協会が1863年に、ラグビー・フットボール連合が1871年に設立され、ルールを制定し」、半ばケンカの延長のようだったゲームが、秩序だった、技術が強調されたゲームへと進化しました。体格がいいだけで勝てるゲームではなくなり、足の速さや、ボールを扱う技術が問われるゲームへと進化したのです。サッカーやラグビーがやって楽しい、見て楽しいものになるためには、適切なルールが必要であったことは自明でしょう。
ここで、”体格がいいだけで有利”はずるいと判断したことになります。体格だけを争うゲームではなく、技術を争うべきだという哲学があったのです。これは理論的に自明というわけではありません。実際、体格だけを争う競技は存在します。そういう競技をやっている人たちにとっては、体格がいいだけで有利になることは、ずるいわけではありません。また、サッカーとラグビーでも温度差はあります。サッカーは接触プレー全般が禁止され、より体格差が有利にならないルールですが、ラグビーはタックルや押し合いなどは許されていて体格が良い方が有利な面が残されています。
サッカーとラグビーはともに、この時からオフサイドのルールがありました。オフサイドは、簡単に言えば、”待ち伏せはずるい”という考え方からできたルールです。ゴール前での待ち伏せを許すと、背が高いことがとても有利となり、足が速いことがあまりメリットにならなくなります。そして、人がフィールド全体に広がらず、見ていて面白くなくなってしまいます。このオフサイドというルールの微調整はその後何度も行われ、21世紀になった現在でも行われています。サッカーでは2005年、オフサイドの比較的大きなルール改定がありました*7。それは、より面白くするため、よりみんなの公平感を得るため、必要な作業なのです。

普遍・不変ではないずるいの基準

例えば、バスケットボールは比較的、背が高い人が有利なことを許容しているスポーツと思います。しかし、バスケットボールはサッカーに比べ時間稼ぎには厳しく、24秒ルールや8秒ルールが設定されています。一方、バスケットボールもサッカーと同様に待ち伏せはずるいと考えていて、体格がいい人が待ち伏せして守ることを行いにくくするために、ノーチャージ・エリアが設定されたりしています*8。
このように、より面白くするため、よりみんなの公平感を得るため、という共通の目標ではあるものの、それを実現するための”何がずるいか”に関してはスポーツごとに違いがあります。また、同じスポーツでも時代によって変わっています。
金融市場においても、何がずるいと考えられているか、それはどういう考え方に基づいているか、考えていきましょう。スポーツの例を見て分かるように、ずるいの基準は普遍・不変ではない訳ですが、例えば、待ち伏せはずるいと考えられることが多い、足が速いのはずるいとは考えられることは少ないなど、より普遍・不変にずるいと考えられているものがあります。そういうものを、金融市場でも探ってみましょう。

立場によって不利がないこと

各規制はこの哲学に基づいている

速いはずるいか?

以前、高速取引(高頻度取引)について書きました*11。このような速い取引をずるいと言う意見があります。この考え方は一理ありますが、広がりを見せていません。高速取引がずるいので取引をやめる人がそこまで多くなかった、というのが”今のところの”結果です。実際、高速取引をセンセーショナルに批判した書籍”フラッシュボーイズ”*12に登場し、実際に存在するIEXという取引所は、高速取引をあえてできなくし高速取引を締め出す工夫をしているのですが、そこまで取引シェアを伸ばせていません*13。なぜでしょうか?
そもそも、ずるいのを認めない理由は、ずるい人がいるとみんなが参加したくなくなり、参加者が減り、市場が提供すべき価格発見機能と流動性の供給ができなくなるからです。しかし、高速取引は、価格発見機能を提供するまでは行かないものの大きく邪魔をしているわけでもなく、流動性は供給をしているとの評価が多く*11、歓迎している取引参加者が多いのでしょう。
また、流動性を供給している高速取引を締め出すと、単純に彼らが供給していた流動性が減少してしまいます。そして、その立場にいないと使えない情報も特にないというのもあります。さらに、高速取引は機材をそろえれば誰でも参入できますし、非難されるほどの利益は出せなくなっていて、適切な水準に収まっているというのもあるでしょう*11。
サッカーに例えれば、とても足が速い選手が現れた、という程度の話でしょうか。
このように高速取引は締め出すべき程ずるいかと言えば、そうでもない、というのが今のところの結論だと思います。しかし、これらは今のところの評価であり、ずるい手法が発明されればこれらの評価は変わるかもしれません。

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